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居城の一室

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善悪の彼岸

銀誓館学園は無敗の軍団であった。
それは、彼らが戦争において切り札、メガリス破壊効果『生命讃歌』を持っているからだ。
生命讃歌は幾度倒れても立ち上がり、死傷さえも一度は退けるという強靭な力である。
彼らの力をしる組織らは彼らを《生命使い》と呼び、その力を恐れた。
しかし、その力にも欠点は存在する。
1つは死を退けられるのは一度だけであり、二度の死傷は耐えることはできないということ。
そして、もう1つは……その効果は発動してから半日しか持たないということ。


そして今日、12月18日21時。北海道札幌市。
強大な敵、『伯爵』と『異形』を前にして、銀誓館学園の能力者たちはその絶対なる力『生命讃歌』を失った。



「ち…っ、伯爵か異形か、どちらかを選べ、だと!?」

やや前髪の長い、黒髪ショートヘアの少女――静月明良は舌打ちをした。

ようやく追い詰めた原初の吸血鬼の親玉伯爵を前に、吸血鬼とはまた別の敵対勢力が彼ら銀誓館に呼び掛けた
大陸妖狐は言う。伯爵は異形を滅ぼす唯一の存在。倒すと言うのならば我らも刃を向けると。
異形は言う。妖狐の口車に乗り、人間の街に手をかけた伯爵を許すのか?と。

銀誓館学園の能力者たちは選択を迫られた。伯爵を異形の唯一の驚異としてひとまず見逃すか、人類の敵として打ち倒すか。

「……司令塔《コマンダー》の指示では、異形を討てとのことです。けれど…」

長い髪を1つに結った長身で眼鏡の女性――高井春子は口を濁した。
彼らが無敵の軍団としていられる力、メガリス破壊効果『生命讃歌』は、先ほどの戦いの終わりと共に消えてしまった
つまり、ここから先に戦場へと足を踏み入れるということは、命を失う危険へと飛び込むということになる。

「恐れるならこなくてもいいわ。アタシは逃げるなんてプライドが許せないし、戦うわよ」
「ボク…じゃなかった。あたしもまだ戦えるよ!どっちでもいいからぶん殴る!!」

危険を恐れず強気な発言をするのは、金の巻き毛に意思の強い瞳を持つ少女、レイナ・クレイシャンと黒いネコ毛に生き生きとした緑の瞳の中性的な少女鈴木ミーだ。彼女らは若さゆえか、死への恐怖よりも戦いから退くことを嫌う感情が勝っているようだ。

「で…、でも…」
「恐れる気持ちはわかりますわ、春子さん」

小さく震える春子に赤い瞳を細めて笑いかける女性――中原春美は、彼女に優しく語りかけた。

「この戦いは人類の存亡をかけた戦いでしょう。……ですが、誰とて自分の命は惜しい。その感情は当然のことです。恥じることはありませんわ。
……生きたいと思うのならば、退いてもよいのですよ。望まずして命を落とす必要はありません。
……どちらを選んでも構いません。己の信念に従い、貴女が悔やまぬ選択をなさい」
「そうだぜ、春子先輩。退くことだって勇気だ。
……もし、オレらがここで敗れ果てたとしても、連中に再び刃を向ける力がなくなる訳にはいかない。だから、退くのは無駄じゃねぇ」
「――ならば、お退きなさい」
「!?」

突如かけられた言葉に、明良は驚き振り向いた。が、遅かった。明良は黒い爆弾から放たれた煙に撒かれ、意識が揺らいでいく。

「なん、で…」

崩れ落ちる明良は、朦朧とする意識の中悪夢爆弾を放った主へと問いかけた。

「はるみ…せんぱい…」
「静月さんっ!?」

その場に崩れ落ちた明良を春子は咄嗟に腕を伸ばし、彼女の身体を支えた。

「……なんのつもりなんですか、中原先輩…?」

眼鏡の奥で恐れと嫌疑の眼差しを向けて問いかける春子に、春美はいつもの柔和な――しかし、確固たる意志を持つ色素の薄い瞳で見つめ返した。

「これがわたくしの信念に基づいた選択ですわ。わたくしはこの戦いで彼女を亡くしたくはありません。
愛する人と結婚の誓いを立て、幸せな未来を待つ彼女を死地に送るのはわたくしの信条に反しますわ」
「だからって、こいつが納得すると思う?
こいつは幸せいっぱいのリア充である前に戦士なのよ。自分の身を守る為に戦場から強制的に放り出されるだなんて、あいつの誇りを踏みにじるわけでしょ?
あなた、それでもいいっていうの?」

春子の横から訊ねるレイナに、春美はしかし笑みを崩さなかった。

「それでも、わたくしは自身の信念を貫きますわ。例えそれが彼女本人を愚弄することであっても」
「自分勝手な話ね」
「お互い様でしょう。能力者なんて皆自分の信念を貫くために自分勝手に戦っているのですから」

ふふ、とレイナに笑いかけた春美は、春子の方へと向き直した。

「……春子さん、貴女が戦いたくないと言うのなら明良さんを連れて退いてください。わたくしの最後のお願いですわ」
「そんな!最後、だなんて…」

狼狽え、かたかたと震える春子に春美は首を横に振った

「それだけの覚悟を持っての頼みなのです。一生のお願いと言い直した方がよろしいかしら?」
「…わかり、ました。
――でも、お願いです。生きて帰ってきてくださいねっ!」
「努力しますわ」

春美の答えに春子は重く頷き、明良を担いで退路へと向かった。


「……さて、あなた方も悔いのない選択をしてくださいね?あなたたちもまだ若いのですから」
「たかだか20を過ぎたくらいで老成した口振りをしないでくれる?
アタシだって伊達で能力者をやってないわ。アタシの目の前に立ち塞がる敵はぶっとばす。命の危険があってもそれは変わらないわ」
「それに死ぬより先に敵全滅させれば生き残るよ!かんたんかんたん!」

春美の問いににやりと笑うレイナとへらりと笑うミー。二人とも、意志は変わらないようだ。

「心強いお答えですわ。それでは…参りましょうか」
「えぇ」
「うん!」

固い意志を持ち、三人は戦場へと歩き出した。

彼女たちは知らなかったのだ。
我等がメディックの有能さを。
そして聖女アリスが撤退のエキスパートであることを。
……そう。この戦いで倒れても、命を落とす危険性は限りなくゼロに近かったのだ

そうとも知らない彼女たちは、命を賭けるつもりで戦いへと身を投じて行くのであった。



(……という勘違いを背後がしてましたよというお話。途中まで勘違いしたまま書いてました。/滅)
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『結社枠が足りない。』
明ちゃんレイナ様春美さん他若干名の背後にある残留思念。詠唱銀の振り掛け禁止。チョコと猫と幼女とノマカプと我が子をこよなく愛する。銀雨用メッセあったりします。お手紙でどうぞ。

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