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居城の一室

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Good bay sweetpain 『重い、想い 前編』




「オレはアンタを守るための剣になりたいと願っていた」




『でも一番負荷を与えていたのはオレだったんだ』
 


 約束の時間、オレは待ち合わせ場所として指定した喫茶店へとやってきた。
 結社の外でふたりきりで会うなんて、考えてみれば初めてで。ついつい普段よりもめかしこんでしまった。
 と、いってもオレが出来る範囲なんてたかが知れているのだが。

「いらっしゃいませ。一名様ですか?」
「あ、いや、待ち合わせなんだが…」

 出迎えたウェイトレスの問いにオレはぐるりと店内を見渡す。どうやら先輩はまだ来ていないようだ。

「…まだみたいだな。 すみません、あとでもう一人来ますんで」
「はい、かしこまりました」

 ウェイトレスに窓際の席に案内され、オレは窓の外を見つめ水那先輩を待っていた。
 わざわざ外へ呼び出しての話だなんて、一体なんだろうか?クリスマスのお誘いとは言ってたが、下手に期待するのもなんかアレだし…。

「…お待たせ…」

 ぼんやりとしていた思考をさえぎる声に、オレはそちらの方を見る。
 そこには、息を切らし急いでやってきた様子の待ち人の姿があった。
 何故息を切らしているのだろうとふと時計を見れば、約束の時間はとうに過ぎていた。

「お、やっときた。…水、飲むか?」

 テーブルに並べられたふたつのグラスのうち、オレから見て奥にある手付かずの方を差し出す。
 彼はひとつ頷くと向かいの席に座り、水を飲んで息を整えた。

「遅くなって悪い…」
「ん?いいって別に。あ、先輩、何か頼みます?ここガトーショコラがうまいんすよー」

 遅刻の謝罪をする先輩に、オレは笑い彼にメニューを差し出す。

「…あ、じゃあガトーショコラで」
「了解。…あ、すみません!ガトーショコラ二つ!」
「…あ、あと水も」

 オレは声をあげ、横を通り過ぎたウェイトレスにケーキを注文する。
 ウェイトレスは水差しを持って注文をとり、しばらくすると二人分のガトーショコラを運んできた。

 それからしばらくはクリスマスは愛好会で何かやるのかとか、チョコレートフォンデュをするのなら皆で具を持ち込もうか、あ、でも恭子先輩が変なものを持ち込もうものなら全力で阻止しようとか、いつものような感じで話をしていた。

「…んで、わざわざ他所の店を選んでまで呼んだ件ってのはなんだよ?」

 きっと、そんなに特別な意味などないのだろう。そう思い軽い口調でオレは尋ねた。

「ん?んー…学校のクリスマスパーティにも一緒に参加できなかったから、少し早めにクリスマスを祝おうと思ってたんだけど。
 ……結社でやるなら、必要ないかな?」

 返ってきたのは予想通りのどうということのない答え。考えてみれば一緒にクリスマスを過ごしたかったと受け取れるのだが、結社でやるなら、と続くあたり二人きりにこだわっているようには見えない。
 半分安堵半分落胆。だがそれを見せるわけにも行かずオレは笑って答える。

「ん、そういうことか。…ま、いいんじゃねーの?いつ祝ったってさ。
 オレだって妖刀事件の仲間の誕生日昨日だったけどイブに祝うんだし、そーいうのは気持ちが大事なんだよ」

 まぁ、もとよりそういう趣旨のパーティではあるのだが、気持ちとしては同じことだろう。
 水那先輩はいつもの仏頂面のまま首をかしげたが納得したようだった。

「…じゃあ…メリークリスマス…?…あんまり何も考えてなかったけどな。
 …あ、これ…作ってきたから…後で食べて」

 そう言って先輩がテーブルに小さな包みを置く。なんだろうと包みを少しだけ広げちらと中身を見る。その中には小さなフォンダンショコラがあった。

「…うまそ。ありがとな!今度またなんか作って返すぜ!」

 店の邪魔に鳴らないように小声で感想を述べ、俺は笑って答えた。

「…うん。…楽しみにしてる」
「おう、任せとけ!」

 楽しみにしてる。
 その一言が嬉しくてオレは大きく頷いた。

「……あ、今日って何時まで話せる?」
「……ん?オレは今日は遅くなっても大丈夫だけど。明日は授業少ないし。
 ま、どーせテストの返却がほとんどだろうし、授業なんてあってないようなもんだもんな」
「…高校生に戻りたい」

 ぽつりともらした先輩の呟きに苦笑が漏れ、「お疲れさん、専門学生」とねぎらう。

「…ま、あんま遅くなるのも不味いんなら食ったらもう帰るか?」
「………そうだな…」

 先輩は一瞬何かを言いよどんだように見えたが、オレの言葉に頷きまだ手付かずのケーキに視線を落とした。

「…ま、明日は平日だしな。授業少ないって言っても遅刻するわけにもいかないし」
「…そうだな」

 一つ頷き、ケーキを一口食べて水那先輩は再び口を開く。

「……でも、静月に言いたいことが何個かあって…」

 息が、つまるかと思った。
 オレに言いたいこと。何だろうか?オレはまたなにかやらかしたのだろうか?
 胸によぎったいろんな不安を口の中のケーキと一緒に水で流し、何事もなさそうに問い返す。

「……言いたいことって…なんだよ」
「えっと…何から話そうかな…」

 戸惑うように――表情は相変わらず変わらないのだが――言いよどむ水那先輩。

「…良い話と悪い話、どっちから聞きたい?」
「どっちって…。…んじゃ、いい話から?」

 答えるオレに、先輩はさらに言いづらそうに仏頂面をさらにしかめる。
 だったら言いやすい方からでいいよ。そういいかけたところで先輩は口を開いた。

「…良い話が良い話であるとは限らないけど。…悪い話も悪い話であるとは限らないけど」

 何をもったいぶりやがって。そう思ったオレの思考は次の言葉で固まった。





「……良い方は…もう、終わりにしようと思って」





 表情がなくなるのが、自分でも分かった。
 「なにが?」と尋ね返そうかとも思ったが、それは無粋なような気がした。顔を伏せ、オレは頷くしかなかった。
 オレの恋は、終わったんだ。完全に。

「……そっか…」
「今の言い方でよく分かったな」

 先輩の言葉に「なんとなくかな」と答えオレは首を振った。

「…何か2人共辛そうにしているから。…答えを出そうと思って」
「別に…って、言えればいいんだけど…悪ぃ」

 視界に映ったケーキが歪んでいる。オレは必死に涙をこぼさぬよう瞼を閉じた。

「…別に、悪くないから大丈夫。…あの時、迷った俺が悪かった」

 蘇る、バレンタインの記憶。ナズナ先輩の告白を覗き見してしまった後ろめたさに自らも想いをつたえたあの日。

「気にすんなよ。……最初から出ていた答えなんだからさ」
「…ん?どういう事だ?」
「いや、あの…バレンタインの時に断わられてたんだからって意味」

 正確にははっきりと答えられてはいない。だが、それでも言う前からわかってはいた。

「……うん、まぁ………うん。…そろそろ1年くらいか…」
「…だな。……もうそんなに経つんだな」

 額に手をやり、オレはため息をついた。俯き目を閉じているので向かいの先輩の顔は見えない。

「……んで、それ以上に悪い知らせってのはなんだ?」

 このまま話をしていたらみっともなく泣き崩れてしまいそうだ。そう思ってオレは次の話題へと急かした。

「…静月って、結構せっかちだよな。…知ってて悪い言い方する俺も俺だけど。
 …良い話は、まだ終わっていない」

 これ以上話を続けろというのか。この鬼が。

「……なんだよ。これ以上、何かあるのかよ」

 俯いたままオレは向かいの男を睨む。奴はやはりいつもの仏頂面だった。

「…静月…お前……面白いな。
 ……何か、気持ちがほぐれた」
「…?どういうことだよ?」

 やはり表情を変えない先輩に、オレは眉をひそめた。







「……終わりにしようと思うのは、この三角関係。
 …俺は・・・静月と付き合いたい。……だから、付き合って」





 今度こそ、思考がショートした。

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極稀に変わる偽ステシ

岡・耶麻(さて私は何処でしょう)
(おか・やま)
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『結社枠が足りない。』
明ちゃんレイナ様春美さん他若干名の背後にある残留思念。詠唱銀の振り掛け禁止。チョコと猫と幼女とノマカプと我が子をこよなく愛する。銀雨用メッセあったりします。お手紙でどうぞ。

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入学理由:能力者(てかフリスペ)のいる環境に憧れた

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