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居城の一室

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Good bay sweetpein 『終わりの足音が聞こえる』





「壊れてしまうくらいなら、今がずっと続けばいいと思っていた。」


 『壊れてしまってもいいから今を早く終わらせて欲しかった。』




 

 今年よく流行った歌の、軽快なメロディが聞こえた。

「……ん?」

 学園黙示録で初戦負けして教室に戻り、一足遅い昼食にBLTサンドを頬張ったときのことだった。
 それは、ジャケットの胸ポケットに入れてあったオレの携帯の着メロだった。
 サンドを咥えたまま携帯を開く。一通のメールが来ていた。

「黙示はまだ終わってないし…。……あ。」

 差出人の名前を見て、オレは咄嗟にだらしなくしていた姿勢を正す。携帯の液晶には水那冴兎と書かれていた。
 慌ててサンドを飲み込み、コーヒー牛乳で流し込んでから届いたメールの内容を確認する。




 おはよ…冴兎だ。
 急にメールして悪い。

 …今日はちょっと、クリスマスのお誘い。
 と、言っても…クリスマス当日はあまり時間とれないし、クリスマス前に会いたいんだけど。

 出来れば…いつもの場所でもいいけど、どこか別のところが良いかな…。

 ……会って、話したいことがあるから、来て。

 用件だけで悪いけど、これにて。
 返事は、少し遅くなってもいいから…欲しいな。

 …待ってる。                                                  』



 待ってる。最後の一文に思わず胸が高鳴る。

 慌てて鞄を漁り、スケジュール帳を探す。
 確かクリスマス当日はオレもバイトで忙しくてゆっくり話は出来ないことは覚えていた。だが、それの前の休みはいつだったかまでははっきりと記憶していなかった。
 ようやくスケジュール帳を見つけ、パラパラと急いでページを捲る。そしてクリスマス前のページが見つかったと思ったちょうどそのタイミングで教室のスピーカーから予鈴の鐘の音が鳴った。

「……くそ。すぐには返事できねぇ…」

 ちっ、と舌打ちしてオレは午後の授業の準備を始めた。





 結局、バイトだのなんだのでメールを返せたのはすっかり住み慣れてきた住処に戻ってからだった。



 うっす、こんばん!返事が遅れて悪かったな。

 クリスマスかぁ…。いいな!オレも誘おうかと思ってたし、喜んでついてくぜ!

 話って…改めて言われるとなんか緊張するな。
 オレは21日だったら空いてるからその日にしようぜ。

 んじゃ、またな!』


 何度か本文を読み直して送信ボタンを押す。
 「メールを送信しました」の文字を見てふー、と深く息を吐いてそのままベッドへと倒れこむ。

「…クリスマスかぁ…。…去年はどうしてたっけ」

 ぼんやりと、去年の今頃の愛好会の様子を思い出す。
 だいたいあの頃からじゃないだろうか?当時友好結社にいたナズナ先輩が愛好会に遊びに来るようになったのは。
 ……今思い返せば、あの頃から彼女は水那先輩に好意を寄せていたように思える。あるいは、彼が目当てで愛好会に顔を出していたのかもしれない。

「…そういや、去年知代子が主催していたクリスマスのケーキ作りパーティ…水那先輩とナズナ先輩、一緒に行ってたっけ…」

 ナズナ先輩が水那先輩を誘ったのか、あるいは水那先輩と本格ケーキ作りに心惹かれてついていったのか、詳しい話は知らない。だが、一緒にケーキを作ろうと誘ったことは間違いないだろう。
 ちくり、と胸の奥が痛くなった。そんな自分を自嘲した笑みがこぼれる。

「…だっせ。だって、オレ当時先輩のことそんな風に…」

 思ってなかった。言いかけて言葉をつぐむ。
 …思い返せば、あの頃既にオレは水那先輩のことを気にしていたような気がする。
 元より好みのタイプではなかったから気付かなかった。もっと屈強で男らしいタイプに憧れていたのに。水那先輩はそれとは真逆で、線が細く儚げで身長さえ誤魔化せば女装だって似合いそうだ。
 でも誰よりも身近な異性で…菓子を作る人間としても尊敬し憧れていた。
 先輩が菓子を作る姿はとても綺麗で、彼の作る菓子もまた綺麗だった。
 多分、それは彼のチョコに対する愛が表れているからではないだろうかと恥ずかしいことを思ったこともある。
 自分もそれだけ愛されることが出来たら…。そう思ったところで恥ずかしくなった。アホらし。

 ……本当、最近のオレは実にアホらしい。
 最近はよく変なことを言っては水那先輩を困らせていた気がする。
 彼に「俺にどうしてもらいたいんだ」と聞かれて「言えない」と答えたり、「オレみたいな女はやっぱり嫌なのか」と問いただしたり。
 後になって思う。

「オレはどんだけ構ってちゃんなんだよ…」

 深い、ため息。

 …別に、困らせたい訳じゃなく、つい考えなしに口から出てしまった言葉。
 だが、それが余計な負担になってやしないか。そういう思いが胸によぎる。

(……謝ろうかな。やっぱり)

 そう思うものの、そんな話題をぶり返して微妙な空気にするのはやはり嫌だ。
 結局のところ、オレはまた何事もなかったかのように振舞うのだろう。
 でも口から出た言葉は消えない。そんなことで忘れてくれるはずがない。

「…うん、タイミングを見て謝ろう」

 オレは見慣れた天井を見つめそう思った。
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極稀に変わる偽ステシ

岡・耶麻(さて私は何処でしょう)
(おか・やま)
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『結社枠が足りない。』
明ちゃんレイナ様春美さん他若干名の背後にある残留思念。詠唱銀の振り掛け禁止。チョコと猫と幼女とノマカプと我が子をこよなく愛する。銀雨用メッセあったりします。お手紙でどうぞ。

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入学理由:能力者(てかフリスペ)のいる環境に憧れた

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